家づくりのコンセプト


私の建築は、3つのコンセプトで成り立っています。


「木組みの住まい」「自然環境を活かした省エネの住まい」「自然素材を使った健康な住まい」です。
これは、私の生き方のコンセプトともリンクしています。




木組みの住まい

伝統構法によるしなやかな構造

地域の気候風土や暮らしに合わせて作られてきた民家の作りと生活の知恵。
日本の木と職人の技術で作る住み心地のいい家を、未来に繋げたい。

昔から古いものが好きで、建築の仕事への入口として、古民家再生の第一人者でもある降幡建築設計事務所の降幡廣信氏を師事し、そこで多くの仕事を学ばせていただきました。
かつて雪深い新潟の山中へ測量に行ったとき、その材料の素晴らしさに圧倒されながら、トラックにも乗らないような長い材料をどうやってここまで運び上げたのか、感嘆するばかりでした。さらに、一本一本曲がりくねった丸太材をまるで縄を編むようにして空間に組み上げていく様はなんと逞しく美しいことか。そこには古く昔ながらの工法というだけでなく、新しく美しいデザインがありました。柱は石に乗っているだけ、茅葺き屋根も釘を使わず桁に乗っているだけにもかかわらず、地震のときには大きな力に抵抗することなくしなやかに力を吸収する。まさに「柔よく剛を制す」かつての日本の大工職人たちの知恵と技術力には目を見張ります。
金物を使わず「木は木で締める」という先人たちの工夫は、地震に強い木造建築を作るという知恵や技術に脈々と継承され生き続けていると感じます。
こうして千年以上も受け継がれてきた技術は、古ぼけた時代遅れのものでなく、私たちがこれからも大切に受け継ぎ、学ぶべき最先端の木造文化であると考えています。

自然環境をいかした住まい

パッシブデザイン住宅

自然を範とする健康な家、持続可能で美しく作られた生活環境の創造
これは環境や平和な社会のためにも待ったなしです

欧米型の住まいは、石やレンガで頑丈な壁を築き、自然災害にも負けない堅牢な家づくりです。それに対して日本の家は、かつては土と木と藁と紙でできた控えめな家づくり。自然災害には弱いけれど、自然を取りこみ、自然環境と共存する循環型の家づくりでした。
どちらが良いとは一概には言えませんが、日本は昔から自然の力を上手に利用しながら、四季のある一年を過ごす工夫をしてきました。祭りや食文化、俳句や短歌などの文学も季節のなかで受け継がれてきた美しく繊細な日本の文化です。
地球規模で環境問題やエネルギー問題が深刻化しているいま、再生可能なエネルギーをいかに有効に、最小限の利用で暮らしていくかは、一人一人が真剣に取り組んでいかねばならない大切な課題です。
なるべく化石燃料や電力を使わないように、無尽蔵でお金のかからない太陽熱や豊富な森林資源など、サスティナブルな資源を有効利用した、日本らしいライフスタイルや住まいのあり方ができないものか。私たちは常に考えて提案し続けていこうと考えています。
光を取り込み昼間から照明を点けなくてもよい間取り、窓を開ければ自然の風が通り、エアコンの要らないつくり、冬になれば日差しが入る暖かい家……。そうしたパッシブデザインを取り入れた暮らしは経済的にも環境負荷的にも、暮らしを軽くしてくれるはずです。

Forward to 1985 energy life

自然素材による健康な住まい

オーガニック住宅

地球環境にも、住む人にもやさしい
安心して楽しく暮らすことのできる快適な住まいをつくりだすこと

ドイツで生まれた建築生態学でバウビオロギーという考え方があります。衣服は第二の皮膚、建物は第三の皮膚という考え方です。
石油製品や化学物質をたくさん含んだ「新建材」というものに覆われた家の中で生活していたら人の身体はどうなってしまうでしょうか。
身体を守るべきはずの建物がシックハウス症候群、化学物質過敏症、電磁波、さまざまな原因不明のアレルギー……となって、健康を蝕んでいく。これでは家族が幸せになるために作った建物なのに何のために作ったのか途方に暮れてしまいます。
私は、土や木や紙など出来る限り自然素材を使い、おいしい空気を感じる健康な住まいをつくりたいと考えます。自然素材でできた家は最後には土に還ります。
環境にも地球にも、そして人にもやさしい住まいを作り続けていくことが、私にできる子供たちと未来への責任だと考えます。