ブログ:あゆみ保育園15周年

独立開業して初めて保育園の設計をさせていただいたのが市内にある「あゆみ保育園」でした。

15年目を迎え、やっと借入金の返済が終わったことをお知らせする広報に寄稿して欲しいということで書いてみました。

「みんなで作るみんなの保育園」づくり

20年前上田市に設計事務所を開設し、住宅や旅館を専門にやってきましたが、保育園の設計はあゆみ保育園が始めてでした。どんな保育園を作るのかー私の保育に対する考えや建物に対する考えの基礎となったのは同じ保育理念を持つ松本市の「山の子保育園」での経験でした。そこで裸足保育、泥んこ遊び、木登り、水遊び、お絵かき、絵本の読み聞かせ、労働を通じ仲間との連帯感や達成感を共有し、テレビなどは見せず、早期教育に頼らず、「ヒトが人間になる」幼児期に育てるべき心と身体をまず第一に考えること。その保育をするための器としての建物は「朝の忙しい時間に送り迎えするアプローチ」「リズムのできる大ホール」「食育を考えた厨房」「自然素材を使った安全な材料」それらをテーマにして作られるべきだという考えが根付きました。

建設計画はその後保育士さんたちによる建設委員会ができ、私にとって始めての保育園づくりでしたが、そこで話し合われる現場の意見はとても参考になりました。例えば段差があってもそこは子供たちの運動や感性を育てる大切なものだとか、厨房の先生と子供たちの目線はなるべく高さがあうように厨房の床を低くするとか、どこかに子供がひとりで泣けるような泣き部屋的な部屋があるといいなあとか、年長さんは力がついてひと際お兄ちゃんお姉ちゃんになる。5歳児部屋は一段上げて年長さんである自覚と自信をもたせてあげたい等々、沢山の要望を聞かせてもらい私なりに考えたのがこの保育園です。

建築技術者としてはリズムで走り回るための丸い建物はどうやって作ったらいいのか。ホルムアルデヒドなど化学物質を排除するため薬品漬けの外材や合板を使わずに作るにはどうしたらいいのか。そんなことに気を配りながらもなんとかみなさんとともに創り上げることができました。

ここを卒園した子供たちが建物を見ながら幼少の頃のここでの暮らしを思い出してもらえれば設計者としての喜びと感じます。

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